「アリス、システム……?」 あまりにもハッキリとした一言に、棗は自らの胸に浮かび上がった疑問を払拭する術もなく、ただ相手の言葉を鸚鵡返しにしただけだった。アリスはハッと我に返ると、慌てたように目を瞬かせる。 「ご、ごめんなさい……! 私、何を言ってるんでしょう!?」 「無意識のうちだったと言うのですか? ですが、アリスシステムとは……貴方と同じ名前ではありませんか。しかも、研究していたのは貴方の父上……。貴方が無関係だとは思えませんがね、アリス」 コツンと靴の音を響かせ、エニグマはアリスに一歩踏み出す。 最早そこに穏和な笑みは欠片も無く、少女を見つめる目ですらない。嘘を暴き、強引なまでに真実を見抜こうとする蛇の目だ。無数の針のような殺気を身に受け、アリスは「ひっ」と短い悲鳴を上げて後退する。 それでも、エニグマは蛇の如き視線を外そうとはしなかった。 「待て」 両者の間に割って入ったのは棗である。片手でエニグマの胸を押し退けると、アリスを庇うように立ち塞がった。 「そこまでにしておけ。アリスが困っているだろう」 「お言葉ですが、棗。彼女は確実に何かを知っている。恐らくコードゼロ計画とやらが、我が機関が予言した災いの源でしょう。手遅れになる前に、一刻も早くそれを断たなくてはいけない。――そうでしょう?」 静かではあるが殺気に満ちた言葉を紡ぐエニグマ。その一言一言に呪力が込められていると錯覚するほどであったが、棗は怯む事無くエニグマを見据えた。 「だからと言って、アリスに圧力をかけて何になるというんだ。今のお前の感情を向けるべきは、彼女ではない筈だ」 「…………」 「恐らくお前は、神を信仰する者としてコードゼロ計画が気に喰わないのだろう。だが、それを考え出したのはアリスではない」 この研究所に勤めている研究員が考えたのか、それとも社長の指示か。棗の言葉に、エニグマが纏っていた殺気は僅かに和らいだ。 「……気に喰わないなんていう言葉で片付けないで頂けます? ヒトが神に匹敵する力を手に入れようなんて、それだけで罪なのです。ヒトは神から与えられた以上のものを欲してはいけない。それ以上のもの――禁忌に触れようとすると、十五年前のゲートクロス事件のようになるのです」 ふっとエニグマの口から自嘲めいた笑みが零れた。それは、世界と世界を融合させるという大罪を犯した者と同じくヒトである自分に対してだろうか。 ゲートクロス事件を引き起こした張本人の身元は結局明かされず、行方知れずとなっている。世間では、世界と世界の狭間に吸い込まれてしまったのだろうと囁かれていた。 「私は、禁忌に触れる者を許さない。咎人達の罪を断つ為に、私は神から力を授かったのです」 「成程。君が扱う炎は差し詰め『断罪の焔』と言った所か。どこの機関の者かは知らないが、たった一人で我が社に乗り込むとは無謀極まりない」 何の前触れも無く、凛とした女性の声が響いた。突如とした第三者の介入に、棗達は一斉に扉の方を向く。 |